これは別れさせ屋案件の話です。
雪解けし、まだ少し肌寒日が残りながらも桜が咲く頃。
対象宅へ調査に向かうと家族全員でなにやら荷物を抱えて家から出て来るではないか。
荷物から察するに、近隣の公園で花見をするようだ。
状況を担当者に報告して、指示を仰ぐ。
「そのまま、いい感じに花見のふりして接触できる?」
なかなか難しいと思ったが、できなくはない。
接触すると決まれば即行動。
速やかに花見客に扮装する。
コンビニへ走り、つまみとノンアルを買い戻る。
対象一家は、先ほどと変わらず花見を楽しんでいる。
少し離れたベンチから花見を装いつつ対象を観察する。
なんとも穏やかな休日の家族の団らんそのもの、自然とこちらの気も緩みそうなになる。
桜を見上げると前日が雨だったこともあり、所々散っている。凛々しくも儚いななんて思いながら桜を見ていると…なんと、こちらに対象のお子さんが寄ってきた。
そして、私の足元で立ち止まりこちらを見上げている。これはチャンスだ。とちょっかいをかけて、あやしてみる。
内心は「もしや子どもならではの直感か何かで、怪しまれてるのではないか」とも思っていた矢先、対象が駆け寄ってきた。
ニコニコしながら「すみません!」と子どもを抱え上げる対象。それをきっかけにコミュニケーションを取る。
欲しい情報の収穫もあり、接触する事も出来た上に、思いもしなかった花見もできた。
こういうことはそうそうないが、とても充実した調査だった。
ただ、1つだけ冷静に考えて欲しい。
一家団らんで花見をしている幸せな空間。
そこに私達がいるということは・・・。
※調査員ブログ